はじめに:トマトソースは、どんなものがお好みですか?

トマトソースのパスタと一口に言っても、思い浮かべる味は人それぞれですよね。

僕自身、料理人としていろいろなトマトソースを作ってきました。香味野菜のみじん切り(ソフリット)を飴色になるまで炒めてコクを出したり、大きく切った野菜と一緒にコトコト煮込んだり、ニンニクを強めに効かせたり……。

巡り巡って、いま僕がいちばん気に入っているのが、今回ご紹介する「トマトのフレッシュさを活かした、煮詰めないトマトソース」です。

このソースのスパゲティに、前編のカプレーゼでも使ったカルディの「トーテムフード ブッラータ」(125g)を、丸ごとひとつ贅沢にのせます。

主役はブッラータですが、ひと皿を支えているのはトマトソース。ナイフを入れた瞬間、とろりとあふれ出すクリームが、軽やかなトマトソースと混ざり合う。この瞬間のために作るパスタです。作り方のコツと、ソムリエ目線で選ぶワインもあわせてお届けします。

先に結論:おいしくする3つのポイント

1. ニンニクは焦がさず、香りをオイルに移すだけ

弱火で香りを移し、色づく前にトマトを加えます。焦げの苦みやニンニクの強さを出さないことで、トマトの香りとブッラータのミルク感を邪魔しません。

2. トマトは煮詰めず、2〜3分軽く煮込む

短い時間で火を通すだけ。フレッシュな酸味と軽快さが残り、ブッラータのコクとのコントラストが際立ちます。

3. 粉チーズとバジルは混ぜ込まず、盛り付けの最後に

器に盛ったあとに散らします。味をあえて均一にしないことで、ひと口ごとにチーズのコクやバジルの鮮烈な香りが飛び込んできて、最後まで飽きないリズムが生まれます。

材料(2人分)

材料一式。スパゲティ、カルディのブッラータ、カットトマト(390g)、ニンニク、バジル、粉チーズ、オリーブオイル、塩、黒こしょう
  • スパゲティ(お好みの太さで。撮影では1.7mm・表示9分):180g(1人90g)
  • 冷凍ブッラータ(トーテムフード):1個(125g)※前日に冷蔵庫へ移して解凍。解凍の時間はパッケージの表示を確認してください
  • カットトマト(パックまたは缶):1個(約400g。撮影では390gのパック)
  • 塩:トマトの重さの0.7%(400gなら2.8g、撮影の390gでは2.7g)
  • ニンニク:2片
  • EXヴァージンオリーブオイル:大さじ2+仕上げ用に少々
  • 水:50〜100ml(トマトの容器をすすぐ分)
  • 粉チーズ(パルミジャーノ・レッジャーノやグラナ・パダーノ):適量
  • バジル:数枚
  • 黒こしょう:お好みで
  • 砂糖:ひとつまみ(酸味が強いときだけ)
  • パスタの茹で湯の塩:お湯の1%(1Lに10g)

作り方

工程1:お湯を沸かし、パスタを茹で始める

パスタの茹で加減は、ソースによって変えています。クリーム系は、麺に芯が残ると口の中でソースだけが先になくなってしまうので、表示時間どおりか、やや柔らかめ。オイル系やこのトマトソースは、麺の歯ごたえと小麦の味も楽しみたいので、少し早めに上げます。

1.7mmのスパゲティの袋。茹で時間の表示は9分

塩1%のお湯でパスタを茹で始め、タイマーは表示時間の30秒前に合わせます(9分の表示なら8分30秒)。

8分30秒に合わせたキッチンタイマー
沸騰したお湯でスパゲティを茹でている鍋

ソースは5分ほどでできるので、パスタを茹で始めたらすぐに取りかかると、仕上がりがそろいます。

工程2:ニンニクの香りをオイルに移す

冷たいフライパンにオリーブオイルと、包丁の腹でつぶしたニンニクを入れ、弱火にかけます。焦がさないように、オイルに香りを移します。

冷たいフライパンに入れたオリーブオイルとつぶしたニンニク
フライパンを傾けて、弱火でニンニクの香りをオイルに移しているところ

工程3:トマトと水を加え、つぶしながら2〜3分軽く煮込む

香りが立ったらカットトマトを加えます。ホールトマトより果肉のフレッシュさと酸味が残りやすいので、短い時間で火を入れる今回の作り方に向いています。

空いた容器に水(50〜100ml)を入れてすすぎ、フライパンに注ぎます。容器に残ったトマトも無駄になりません。

ここで足す水分は、パスタの茹で汁ではなく真水です。トマトソースは酸味が強いぶん、塩気とのバランスがピタリとはまるとおいしくなる一方で、しょっぱく感じやすいソースでもあります。料理に少量の酢やレモンを加えると、塩を控えめにしても塩味を感じやすくなりますよね。酸味には塩気を引き立てる働きがあり、それが行きすぎると、しょっぱさになります。そこで塩はトマトの0.7%で決め、塩の入った茹で汁は足しません。

トマトを加え、木べらでつぶしながら軽く煮込んでいるところ

中火で、木べらでトマトを軽くつぶしながら、2〜3分軽く煮込みます。塩(トマトの0.7%)を加えて味見をし、酸味がとがっていると感じたら、砂糖をひとつまみ。カットトマトはメーカーや時期によって酸味が強いことがあり、砂糖で角が取れて、トマトの甘みと旨みが前に出てきます。

はかりで量った塩2.7g(トマト390gの0.7%)

煮込んだら火を止め、パスタの茹で上がりを待ちます。

2〜3分だけ煮込んだ、煮詰めないトマトソース

工程4:パスタは表示時間の30秒前に上げ、ソースと和える

パスタを上げたら、火を止めたフライパンでソースと手早く和えます。茹で汁は加えません。

茹で上げたスパゲティを、トングでトマトソースと和えているところ

工程5:器に盛り、ブッラータと粉チーズ、バジルをのせる

パスタを器に盛り、解凍したブッラータを真ん中に丸ごとのせます。粉チーズをふり、手でちぎったバジルを散らし、お好みで仕上げのオリーブオイルと黒こしょうを。

器に盛り付けた、ブッラータをのせる前のトマトソースのスパゲティ

イタリアンでは、フライパンの中でチーズをソースと一体にする作り方が多いのですが、僕はあえて混ぜずに、お皿の上で散らすのが好きです。チーズのコクが強く香るひと口、バジルの香りが弾けるひと口。すべてを均一にせず、ひと皿の中に味と香りの濃淡とメリハリをつけることで、最後まで飽きずに食べ進められます。

完成

ブッラータを丸ごとのせ、バジルを添えたトマトソースのスパゲティ

鮮やかなトマトの赤、ちぎったバジルの緑、そして真ん中に鎮座するブッラータの純白。テーブルに置いただけで、ちょっとしたごちそうの顔になります。

ナイフを入れると、薄い膜の中から、生クリームを含んだとろとろのストラッチャテッラがあふれ出します。それをソースとパスタにからめて、ひと口。

ナイフを入れて、中のクリームがあふれ出したブッラータ

まず広がるのは、トマトのフレッシュな酸味と香り。そこへブッラータのミルキーなコクが追いかけてきて、酸味をまあるく包み込みます。2〜3分だけ火を入れたトマトからは、生とは違う甘みと旨みも顔を出し、噛むたびにアルデンテの麺から小麦の香り。バジルが弾けるひと口、チーズが香るひと口と、食べるたびに表情が変わります。

定番のトマトとモッツァレラのパスタもおいしいですが、チーズをブッラータに替えるだけで、いつもの食卓が一気に特別なひと皿に生まれ変わります。

大人の寄り道:飲みたいワインに寄せる3つの選択肢

ブッラータのトマトソースパスタと、白ワイン・赤ワインのグラス

その日の気分で選んでください。前編のカプレーゼと並べるなら、Bがおすすめです。

A(僕のイチオシ):トマトソースの定番の赤「キャンティ」

  • ラベルで探す言葉:Chianti
  • 理由:サンジョヴェーゼの酸味がトマトの酸味と重なり、渋みはブッラータのコクがやわらげてくれます。

B(前菜から通しで):冷やした赤の微発泡「ランブルスコ・セッコ」

  • ラベルで探す言葉:Lambrusco Secco(辛口。甘口のAmabileやDolceと間違えないように)
  • 理由:赤い果実の香りと泡の爽快感がトマトの甘酸っぱさに合い、前編のりんごと生ハムのカプレーゼから1本で通せます。

C(軽やかに合わせる):よく冷やした白「ピノ・グリージョ」

  • ラベルで探す言葉:Pinot Grigio
  • 理由:煮詰めない軽いソースなので白でも負けず、ブッラータのミルク感をさわやかに引き締めます。

おわりに:あなただけの組み合わせを探してみてください

ニンニクの香らせ方、短い火入れ、仕上げの濃淡。この3つを押さえれば、家のトマトソースが、ぐっとお店の味に近づきます。

今回はブッラータを丸ごとのせましたが、トマトソースだけで楽しむ日があってもいいし、具材を変えるのも自由です。休日の昼下がり、前編のカプレーゼとこのパスタを並べて、冷えたワインの栓を開ける。そんなゆったりした時間を、ぜひ楽しんでください。

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この記事を書いた人

ゆきお
イタリアンの現場で15年働いた元シェフ。ソムリエの資格を持ち、現在はパティシエ・ジェラート職人として、食の商品開発(OEM)にも携わっています。「理屈がわかると、料理はもっと楽しくなる」をテーマに、家庭で再現できるプロのコツを発信しています。愛犬は黒柴のぷうぷうと、チワックスのぐうぐう。

ABOUT ME
ゆきお
「L'Artigiano della Felicità(しあわせを届ける職人)」。それがこのブログのテーマです。 食に関わるすべての人――美味しいものを食べて笑顔になりたい人も、美味しいものを作ってお客様を笑顔にしたいお店のオーナーも。私のこれまでのすべての経験が、あなたの「しあわせ」のきっかけになればこれほど嬉しいことはありません。 どうぞ、ゆっくりと記事を楽しんでいってください。